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旅行記

アジア旅行 2001-2002
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03.中国後編

7.四川省チベット(甘孜) <2001年8月16日〜8月18日:康定→甘孜>

康定

理塘から康定に向かうため、朝早くに起きバスターミナルへ向かう。
途中、野犬が僕に向かって吠えてきて、かなり恐ろしかった。早朝、まわりにだれもいない時間帯に、野犬と一対一で対峙したくないものだ。

理塘から康定へは、いくつか峠を越えるが、天気も悪く、中旬から理塘ほどの感動はおぼえなかった。
それでも、途中、雪山が平原の向こうに見えた時は、なかなか美しいと思った。
とんでもないつづら折りの峠道を越え、後は康定まで、ただ下るだけになった。

康定は、高い山に挟まれた、狭い谷間に出来た町だ。大草原の理塘とは、まったく対照的な立地条件だった。

今日、このまま夜行バスに乗れば、明日には成都に行くことができる。
しかし、せっかくここまで来たのだから、甘孜にも行ってみたい。成都に行くべきか、甘孜に立ち寄ってみるか、迷ったが、結局行かなかったことを後悔したくなかったので、甘孜に行くことにした。
明日の甘孜行きのチケットを買い、バスターミナル近くの宿に部屋を取った。

康定は、交通の要衝ではあるが、それほど大きな町ではないようで、川に沿って来たから南まで簡単に歩くことができる。食堂やお土産屋、スーパーマーケットなど、一通り揃っているが、特にこれといって見るものもないので、ただひたすら町を行ったり来たりしてそぞろ歩いた。

甘孜

今日も朝早く起き、バスターミナルに向かう。移動となると早起きしなければならないことが多く、移動が続くと眠たい日が続く。
おまけに中国は時差がない関係で、本当なら一時間遅くなるはずなので、朝の6時とはいってもまだ外は真っ暗である。

バスに乗り、康定から離れるにつれ、また風景がチベットらしくなってくる。
チベットの住居も、地方によって少しずつ様子が変わってとても面白い。
それほど距離が離れていなくても、石が主であったり、土が主であったりする。もちろん、距離が離れていないというのは、バスを使っているからであり、実際に歩くとかなりの距離であるのだろう。

康定から甘孜に至る風景も、なかなか雄大でよかった。特に甘孜に近づいてくると、緑の山々の間に、ごつごつと尖った高い岩山が見られ、周辺の田園風景と対照的な風景をなしていた。
甘孜は、山と田園風景の中にあった。

甘孜には、夜7時頃に到着したので、あまり町の様子を見ることは出来なかったが、これはどうしたことかと思えるほどの建設ラッシュだった。
町の中心の通りを除いて、至るところ建設中の建物だらけで、道路工事中のところも目立った。一体、甘孜で何が起こっているのか?

甘孜では、看板の出ていない宿に泊まることになったが、1ベッド6元と格安だった。
そのかわり、トイレは外の路地裏であるが。
宿のオーナーは微妙に英語をしゃべることができるが、ほんのわずかにしゃべることが出来る場合は、むしろ出来ない方がいいと思うこともある。

夕食は、宿の隣の食堂で食べた。康定飯店といって、ここで働いている張利利、張俊と仲良くなり、夜遅くまでここで日本語を教えたり、スケッチを見せたりして過ごした。張俊は、この食堂の息子で、張利利は、ここに働きに来ているリスのような感じのかわいい女の子だ。

結構忙しそうな仕事の合間に、ちょこちょこと僕のところにやってきて、おしゃべりしていく。時々、お客もほったらかしで、僕のテーブルにいるので、逆に僕の方が心配してしまうくらいだ。

部屋に戻ろうとすると宿のお姉さんがあっちの部屋に移れという。行ってみると、僧ばかりの部屋で、何か異様な雰囲気がただよっていたが、チベット人と同室よりも、こちらのほうが安全との配慮だろうか?
バター茶の匂いの立ちこめる中、眠りについた。

***

朝、僧たちのがさごそと起き出す音で目が覚める。僧はもっと早起きかと思っていたが、どうやらそうでもないらしく、時間は7時過ぎだった。
もっと寝ていたかったので、僧たちが出て行くまでうだうだとベッドの中にいた。

そろそろ起きようかという時に、小坊主がやってきて僕のベッドにちょこんと座った。
かわいい顔をしているが、ひとつひとつの動作がやけに乱暴な小坊主だった。

僕の持ち物ひとつひとつに、いちいち興味を示し、しまいには勝手にカバンのチャックを開けて、中の物をひとつひとつ取り出していく始末だった。
虫除けスプレーを見つけた彼は、それを何と思ったのか、服の上にシュッシュッと振りかけはじめた。別に使い方は間違ってはいなかったので、そのまま放っておくと、気がつくと目を押さえて目から涙を流していた。
「大丈夫か?」などと言っていると、まだ懲りずに、今度はジッポ用のオイルを取り出し、それを体に振りかけようとしていたので、あわてて今度は止めに入った。

小坊主に手を引っ張られるように外に出かけることにした。
しばらく歩いていると、彼はどこかへ走り去っていった。

僕は、町の中心からゴンパを目指し歩いていく。甘孜の町の中心部は商店街になっていて、少々騒がしいところがあり、意外に落ち着かない。
そこら中に僧の姿が見られ、食堂や商店などで2、3人でたむろしている姿をよく見かける。
それにしても、チベット圏の町では、僧の姿が多いと思った。多分それは訪れる町に大きなゴンパがあるためだろう。

町の中心から北に登っていくとゴンパに至るが、その途中の集落がとても良かった。
斜面になっているので、その斜面を巧みに利用し、上手く住居を建てていた。
それにしても、土着の集落とは、どうしてこうも美しいのだろうと、ここでもまたそのことを強く感じさせられた。

土着のチベット住居 土着のチベット住居

バルコニーのある住居 バルコニーのある住居

この集落では、他のチベット圏では見られなかったバルコニーが見られ、それが一つの特徴でもあるようだ。
壁は、土で作られていて、土の斜面からまるで生えてきたかのように、地面と一体化していた。歩いている途中の風景の移り変わりも面白く、どこまで行っても、はっとさせられるような路地が迷路のように続いていた。

ゴンパに行こうと思っていたが、この集落がとても良かったので、ここでスケッチをしていくことにした。
雨が降っていたが、入り口に前に、庇のある家があったので、その玄関前にお邪魔してスケッチさせてもらうことにした。

しばらくすると、その家の主人が帰ってきた。
「タシデレ」と挨拶すると「ニーハオ」と挨拶が帰ってきた。僕が立ってスケッチをしているのを見ると、家の中から椅子を持ってきて貸してくれた。甘孜もまたいいところだと思った。

通りがかる人が、みな僕のスケッチを覗き込んで行く。
子供たちが僕のまわりを取り囲む。

***

スケッチを終え、ゴンパに向かった。
ここのゴンパの僧院は、他の僧院と少し造りが変わっていて、集合住宅風というか、一つのまとまりが大きく、それが斜面に段々状に建てられていて、下の階の屋上が上の階のテラスになるという、まさにテラスハウスの構成と同じだった。

僧院からは現代の音楽がガンガンにもれ聞こえていて、彼らもやはり、僕らと同じ若者なのだなと思った。

カラフルな僧院 カラフルな僧院

僕が、僧院の前で写真を撮っていると、一人の若い坊さんが猛ダッシュして、こちらに向かってきた。
もしかして、写真を撮ってはいけなかったかと思ったが、何のことはない、彼はただ僕のカメラが見たかっただけのようだ。チベットのお坊さんには、やけに明るい人が多いような気がするのは、気のせいだろうか?

ここのゴンパも、前は広場になっていて、その広場から町とその向こうの畑や山の美しい風景を一望できる。どこに行っても、ゴンパが町の中で最も高いところに位置するこの構成は変わらなかった。

パッチワークのような集落と畑の風景 パッチワークのような集落と畑の風景

ゴンパから町へ降り、今度は、町の南側へ向かう。
バスターミナルの角から、山の上へ向かう道路を登っていくと、そこから川の向こうの田園地帯と山々の美しい風景が見渡せる。

今日は、一日ほとんど雨で、山の方も雲で隠れていたが、夕方のほんのひとときだけ、山が雲の間から顔を出し、晴れ間をのぞかせてくれた。
やはり、雪を抱いた高い山が見えた時が一番美しく、段々畑の緑や黄色の柔らかい色と、よい対照をなしていて、とても美しかった。
集落も点在しているが、風景の中に溶け込んでいるので、よく見ないと気がつかない。

田園地帯と山々の美しい風景 田園地帯と山々の美しい風景

雨が降ってきたので、宿に戻り、宿の隣の食堂にいくと、顔なじみになっていたので、歓迎された。
張利利は、「今日は何を描いたの?見せて、見せて!」というので、今日スケッチした住居を見せてあげた。

食事の後、張俊と張利利が、また僕のところに来たので、今日もいろいろとおしゃべりをする。
今日は二人にせがまれて、張俊には龍の絵を、張利利には魔法瓶に描かれている花の絵を描いてあげた。二人とも大喜びしてくれた。

今夜は、食事をした後、さらに店のおばさんと張俊、張利利の食事の席に僕まで呼んでくれて、2回目の夕食となった。

張利利は、僕の写真を欲しがり、僕が明日出発することを告げると悲しそうな顔をしていた。
本当にいい出会いが出来て良かったと思う。
本当は、もう少し食堂にいたかったのだが、宿のお姉さんに「もう寝る時間よ」と連れ帰りに来られたのだった。俺は子供か?

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