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ホーム旅行記>03.中国後編(アジア旅行2001-2002)

03.中国後編

6.四川省チベット(理塘2) <2001年8月14日〜8月15日:理塘>

理塘

理塘には、リタン・ゴンパという立派なゴンパがあるので行ってみることにした。
ゴンパのすぐ手前にマニ塚があり、その脇でマニ石を彫っている彫り師たちが、カンカンとのみをたたいてマニ石をつくっていた。
その様子を眺めていると、「ハロー」と呼ばれたので行ってみると、どうやら一つ10元でマニ石を彫ってくれるらしい。
とても欲しかったので、適当な石を探して彫ってもらうことにした。
最初、持ち歩くことを考えて、小さめの石を選んだが、これだと彫る最中にすぐ割れてしまうらしく、結局、本一冊くらいの重さのありそうな石になってしまった。

マニ塚 マニ塚

彫り師は手際よく石に文字を彫り込んでいく。文句は「オン・マ・ヌ・ペイ・メイ・ホン」というらしい。かなりポピュラーな文句のようで、マニ塚に積み上げられているマニ石の多くが、この文句になっていた。
出来上がったマニ石を受け取りゴンパへ向かう。

このゴンパもまたバター茶くさかった。しかし迫力は中旬のゴンパよりもあるように感じた。しかもタダなのがうれしい。
全体としての見え方は中旬の方が良かったが、ここでいう迫力は、ゴンパそのものの迫力である。
ゴンパの中にはでは、大きな木の下で僧が集まり、集団で読経していた。全員、読経しながらも顔はこっちを向いていた。
本堂は広い前庭をぐるりと囲む形で僧坊が設けられており、一種独特近寄り難さと迫力があった。
本堂の前に基準点を示した碑があり、それによると本堂のこの高さで4043.22mだった。

リタン・ゴンパ リタン・ゴンパ

読経する僧たち 読経する僧たち

ゴンパをひととおりまわり、町へ戻る途中の集落でスケッチすることにする。
スケッチをしていると、またいろんな人が立ち寄って見ていく。特に小坊主に気に入られたようで、近寄ってきては見てどこかに行き、また近寄ってきては見てどこかに行き、最後には友達の小坊主を連れて来て、ずっとそばで遊んでいた。

小坊主たち 小坊主たち

608 608

出来上がりも近いころ、サングラスをかけたやや不良少年ぽい子供がやってきた。彼の名前は608(リューディエンパー)というらしい。最初は、608というのは、彼の家の住所かとおもったが、そうではなく、彼の名前に数字をあてはめたものらしい。
なかなか面白いやつで、おもむろにタバコを取り出して吸い出した。一体おまえは何歳なんだと突っ込みたくなった。

スケッチが終わるまで608は待っていて、終わると今度は腕に龍を描いてくれと言ってきた。
下書きをして、何とか描けそうだったので、彼の腕に龍を描いてやった。
彼は不良少年だったが、実は結構気の利くいいやつで、僕が町に帰ろうとすると、僕の家に来てくれと言って、彼の家に連れて行ってもらい、いろいろともてなしてくれた。

彼の家もチベット式の民家で、ンナガの家よりもやや豊かなように感じられた。
彼の家ではコーラをごちそうになり、モモも出してくれた。お母さんと妹もにこやかに迎えてくれ、今日もまたいい出会いがあってうれしかった。

長居するのも悪いので、腹がコーラでたぷたぷになったあたりで彼の家をお暇することにした。

宿に戻り、寝る前にトイレに行くが、トイレは建物の外にある。
ふと空を見上げるとすごい星空がそこにあった。そういえば、今日は快晴だったから、これぐらい星が見えてあたりまえなのかもしれない。
トイレへ向かう途中、しばし空を見上げていた。このときばかりは、トイレが外にあることに感謝した。

***

理塘最後の日、ふと山に登ってみようと思った。

ゴンパにも行ったし、集落も見てまわった。丘の上からですら、あれほど見晴らしがいいのだから、山の上からなら、もっと素晴らしい眺めが得られるに違いない。

山には、ゴンパ方面から登ることにして、とりあえずゴンパに向かう。ゴンパに向かう途中、昨日仲良くなった小坊主たちに後ろから声をかけられる。
「今日、写真もらえると608が言っていたけど、ちょうだい」と言ってきた。
昨日、608にはさんざん今日は渡せないから後で郵便で送ると言っておいたのに、どうやら伝わっていなかったようだ。
「今日は写真はないよ」と言うと、「じゃあ、明日ちょうだいね」と言って去っていった。

山に登るのは、ゴンパの脇出口から出て登るのが一番良さそうだと判断し、そこから山を登り始めることにする。
町自体ですでに3,900m、富士山よりも200m高く、これほどの高度での山登りは、日本ではもちろん体験できない。
その富士山の登頂すら果たしたことのない僕が、軽いピクニック気分で目の前の山を登ろうというのだ。

一見登り易そうな谷筋を選んで登っていくが、どんどん坂がきつくなっていき、ふと下を見ると結構高度が上がっていたようで、意外な斜面の急さに少し恐怖を感じてしまった。
少しでもゆるい斜面を探しながら、道のない斜面をジグザグに登っていく。

途中、野ウサギか何か分からないが、小動物の巣穴らしきものをあちこちで見かけるが、巣の主の姿は見られなかった。
それにしても、今日も雲ひとつない、素晴らしい晴天だ。真っ青な空をバックにした山を見上げながら登るのは気分がよかった。

ンナガに教えてもらっていたボンチョというチョルテンのような石塚を目印にひたすら斜面を登った。近くに見えて意外に遠かったが、ボンチョに到達したときの達成感は、何物にも代え難かった。

ボンチョからの眺め ボンチョからの眺め

腕時計で高度を確認してみると、高度は約4,480mだった。
やっぱり登ってよかった。はためくタルチョを見てそう思った。
この周辺にはだれもいないし、家畜の姿も見かけない、とても静かだ。
風にはためくタルチョの音と虫の声ぐらいしか聞こえない。
今日は一日、この気持ちのよい場所で過ごそうと思う。

たぶんボンチョ たぶんボンチョ

ボンチョの石に腰掛け、おかきを食べながら日記を書く。日記を書いていると遠くの方で野ウサギらしき親子が走り回っているのが見られた。
時々鳴き声も聞こえてきたが、まるでコンピューターで作ったような、何とも奇妙な鳴き声だった。
きっと、あの巣穴の主たちだろう。

夕方になり、行きとは違う、もっとゆるやかな尾根筋を選んで降りることにする。
途中、ふと自分の影が夕日で長くのびているのを発見した感動した。これほどはっきりと自分の影が長く伸びるのを見るのは久しぶりのような気がする。

空が暗くなり、一番星が瞬きはじめた頃、ゴンパのあたりまで降りてくることができた。
ここまで来れば、いくら暗くなっても街灯があるので大丈夫だ。

今日も満点の星空に感動し、眠りについた。

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